ノロウイルス

ノロウイルスは、乳幼児から成人に至るまでの幅広い年齢層に、おう吐・下痢などの胃腸炎症状を起こすウイルスです。大きさは直径が約38nmと非常に小さいですが、カキなどの二枚貝を介した食中毒の原因として、また学校や病院、老人保健施設など施設内集団発生事例の原因として、社会に与える影響は極めて大きいウイルスです。

このノロウイルスが毎年流行してしまう背景には、

  1. 排泄物中のウイルス量が非常に多い、
  2. 感染力が極めて強い
  3. ウイルスが排泄される期間が長い

というウイルスの特徴があります。例えば、ノロウイルスを含んだ排泄物に接触してしまった場合、たとえ肉眼的に汚れていないように見えても容易に感染してしまいますし、下痢が治まった後も1・2週間はふん便中に排泄されているといわれています。

 ノロウイルスは何らかの経路で最終的にウイルスが口に入ることで感染します(経口感染)が、その経路は大きく以下の二つに大別できます。

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(1)食中毒など食べ物を介した感染

 この感染経路には二つのタイプがあります。一つは、ノロウイルスに汚染された貝類による食中毒のタイプ(一次汚染)、もう一つは、調理や配膳をする人の手指や調理器具が汚染されていることが原因で、食べ物がノロウイルスに汚染されて感染するタイプ(二次汚染)です。学校においては特に後者が重要で、実際に学校で起きた例では、業者から運ばれた給食用のパンが原因となった例や、学校給食の調理員や給食当番の児童を介した例などの報告があります。

(2)ヒトからヒトへの感染

 食べ物を介さない点で食中毒とは異なります。下痢や吐物によって手指が汚染され、さらに汚染した手指が触れた場所がノロウイルスに汚染され、最終的に手指などを介してウイルスが口に運ばれ感染します。基本的に手指などが接触して伝播していくため接触感染と呼ばれます。実際に、トイレの便座やドアノブ、手すりなど手指の触れる機会が多い場所からノロウイルスが検出されます。その他、おう吐時には、ノロウイルスを含んだ小さな水滴(飛沫)が1・2m程度周りへ飛び散りますが、その際に周囲の人に感染してしまう飛沫感染も重要です。また排泄物が放置され乾燥し、それらの一部が舞い上がって空気中を漂い、そこを通った人が感染するケースも報告されています。

対処法

流行期には感染の機会は至るところにありますし、特に学校内では容易に広まりやすい反面、一旦流行すると充分な対策が難しいことが予想されます。そのため、早期の対応が最も重要になります。まず第一に、周囲の人への感染の機会を減らすために、胃腸炎症状がある方と長時間いることを避け、早めに自宅で休ませる必要があります。また家庭内でも、胃腸症状がある場合には無理させない配慮も重要です。

 ノロウイルスは環境中でも感染力を失うことなく安定して存在するため、放置されたおう吐物・下痢便などから容易に感染が広まります。また、一般的に消毒に使われているアルコール製剤を含め、いろいろな消毒剤に抵抗性があるといわれており、確実に消毒するには次亜塩素酸ナトリウムなどの強力な消毒薬を使う必要があります。そのため、学校や家庭内でおう吐・下痢などの排泄物を処理する際には、適切な方法で素早く処理することが大切です。突然おう吐するなど予期せず周囲を汚染してしまうことがありますので、素早く対応するためには、あらかじめ必要な物品(次亜塩素酸ナトリウム液、エプロン・手袋・マスク・ビニール袋など)をひとまとめにして、決められた場所またはワゴンなどに準備しておくとよいでしょう。次亜塩素酸ナトリウムの希釈の方法などは、あらかじめわかりやすいように表記しておく工夫も重要です。

 身の回りの消毒としては、汚染した手指が触れる機会の多い、トイレの便座およびその蓋、ドアノブ、水道の蛇口、手すり、遊具などを0.02%次亜塩素酸ナトリウムなどを用いて定期的に消毒し、その後充分に水拭きをします。消毒の回数については特に決まりはありませんが、下痢やおう吐をした方がいる場合には消毒の回数を増やす必要があります。またおう吐物や下痢便で汚れた衣類は、一般の衣類と一緒にせずに、バケツなどでまず水洗いし、0.02%次亜塩素酸ナトリウムで消毒後に洗濯することに注意して下さい。

消毒液の作り方

  • ノロウイルスに対しては,次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効です。
  • 次亜塩素酸ナトリウムは,市販の「家庭用塩素系漂白剤(濃度約5%)」に含まれています。
  • ここでは,「家庭用塩素系漂白剤」を使用した,消毒液の作り方をご紹介します。
  • ペットボトルを使用すると簡単に作ることができます(キャップ一杯が約5ml)
消毒液を使用する場所・物出来上がる
消毒液の濃度
作 り 方
ドアノブ,手すりなど,
感染者が直接触れた場所・物
200ppm
(0.02%)

家庭用塩素系漂白剤10ml 水2.5 ℓ 
(ペットボトルのキャップ2杯分)(500mlのペットボトル5本分) 
嘔吐物,便などが
直接付着した場所・物
1,000ppm
(0.1%)

家庭用塩素系漂白剤10ml 水0.5 ℓ 
(ペットボトルのキャップ2杯分)(500mlのペットボトル1本分)

消毒液を取扱う際の注意点

  • 換気を十分に行ってください。
  • 皮膚に対して刺激作用があるので,ビニール手袋などを使用してください。また,手指・皮膚の消毒には使用しないでください。
  • 漂白作用があるので,色落ちが気になる衣類などには使用せず,ほかの方法(85℃以上の熱水消毒など)で消毒してください。
  • 金属を腐食させる性質があるため,金属に使用したときは,念入りに水拭きしてください。
  • 汚物(嘔吐物,便など)など有機物が残っていると消毒効果が低下するため,汚物はあらかじめ除去した上で,消毒してください。
  • 消毒液は,時間の経過とともに効果が落ちることがあるため,その都度使い切りましょう。

予防法

残念ながらノロウイルスに対するワクチンは実用化されていませんので、ノロウイルスの予防法としては、手指を介した接触感染の経路を遮断する意味で石けんを用いた手洗いが最も重要です。特に、食事を用意する際や食事の前、トイレに行った後、いろいろな物に触れた後、外出から帰った後は、手洗いが欠かせません。石けん自体にはノロウイルスを直接失活させる効果はありませんが、ウイルスを手指からはがれやすくし、さらに水道水で洗い流すことにより、物理的にノロウイルスを除去できます。

 ただし、手洗いの方法には個人差があると思いますので、正しい手洗いの方法を確認するとよいでしょう。指先や爪の間、指と指の間、親指の周り、手首などは特に洗い残しが多いですので、意識して手洗いを行います。手を洗った後は、ペーパータオルなどでしっかりと水分をふき取ります。手を拭くタオルは共有してはいけません。

その他

ノロウイルス感染が学校内で発生した場合の法律上の取り扱いについては、ノロウイルスを含めて感染性胃腸炎に関して、学校保健法では明確な取り決めはありません。ただし流行時には、学校医に相談して休校措置などをとることも可能ですし、実際にそのような措置をとった学校もあります。

 具体的な吐しゃ物の処理の方法や、次亜塩素酸ナトリウムの希釈の方法、実際の感染事例などについては、厚生労働省や東京都などのホームページが参考になります。また、地域によっては各自治体/保健所でマニュアルを作成している場合もあります。

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