寿司

シャリ編

「大将! 今日のおすすめ、シャリコマで握ってよ」なんて、粋な発言聞いたことないだろうか?

シャリコマとは、シャリ(酢飯)が細かい(小さい)を意味し、通常のにぎりよりも、一回り小さなにぎり寿司のことを指す。板前とのマンツーマンならではの粋な頼み方のひとつである。

昔の日本のお坊さんが、ごはんのことを「シャリ」といっていたのがはじまり

僧侶のあいだで使われていた「シャリ」という言葉が、一般にも使われはじめたのは江戸時代。当然、歴史ある和食のひとつである寿司屋でも使われるようになる。そのため、シャリ=酢飯だと勘違いしている人も多いが、もちろん酢飯だけではなく白米全般を指す。

また、寿司が好まれた江戸文化においては、粋を重んじ直接的ないい方を避けたからだとも考えられている。

なるほど。では、なぜ昔のお坊さんは、ごはんのことを「シャリ」と呼んでいたのだろうか?

サンスクリット語と関わりがあるらしい…

この雑学には諸説あるものの、どの説にも共通するのは、サンスクリット語が関係しているということ。

言語学的な説明をはじめると長くなってしまうので、簡単にいうと、サンスクリット語とは昔のインドあたりの有識者のあいだで使われていた言葉で、つまるところ、ラテン語などと同じ死語のひとつである。

死語といっても、完全に滅びたというわけではなく、言語学上は学問として残っているが、もう誰も話したりしない言葉だ。

説1:サンスクリット語の「Śarīra(シャリーラ)」が、「米」を意味す

「Śāli(シャーリ)」に、音の響きが似ているため混同してしまった
サンスクリット語の「Śarīra(シャリーラ)」が、「米」を意味する「Śāli(シャーリ)」に、音の響きが似ているため混同してしまったというトリビア
古代、インド文化は中国を通って我が国へやってくる。この過程でサンスクリット語は漢字化されており、その結果、多少のズレが生じるのは仕方のないこと。その証拠に「小石・砂」を意味する「砂利」も、語源は同じである。

説2:仏舎利が米粒に似ていた

火葬後に残ったお釈迦様の遺骨が、真っ白に輝く米粒に似ていたから。生と死は常に隣り合わせにあり、生きるに必要な米と、死んだ後に残る骨とを対照的に捉えたのかもしれない。

分骨を繰り返した仏舎利を表現している

仏教の伝播とともに、長い月日をかけてインド全土へ運ばれた遺骨。その数、約8万! その無数に散った骨を、米粒サイズにたとえるのも合点がいく。

それにしても、実際に人間ひとりの骨を8万以上に細かくしたら、米粒どころじゃない気もするし、遺骨を食べ物にたとえるのは悪趣味だし、個人的には説1を支持する!

握り寿司が2″個”ずつ出される理由

寿司店では、握り寿司を2個ずつ提供されることが多い。回転寿司店でも1皿に2個の握り寿司が乗っている。日本人にとっては当たり前の光景、と言っても過言ではないだろう。

握り寿司はもともと、2個ではなく1個ずつ提供されていた。

日本における寿司の歴史は古く、なんと奈良時代からすでに存在していた! この頃の寿司は、魚を塩とご飯で漬け込む「なれずし」スタイルだったと考えられている。

いわゆる「握り寿司」が誕生したのは江戸時代のこと。握り寿司はあっという間に江戸っ子たちの間で大人気となった。ただ、誕生当時の握り寿司は、現在とは決定的な違いがあったのだ!

その違いとは、ズバリ寿司の大きさである。当時の握り寿司はなんと「おにぎり」くらいのビックサイズであった…。

現在ではちょっと想像ができないが、屋台で販売されることもあったらしい。現在でいう「テイクアウトグルメ」のような存在だったのかもしれない。

おにぎりサイズの握り寿司を1口で食べ切ることは難しいし、ネタが乗っているから噛み切るのも一苦労だ。食べている姿もあまり美しくない。

このような問題を解決するために、握り寿司を2個に分けたという説が有力である。小さくなったことでスマートに食べられるようなったというわけだ。

もう1つの理由は「2つ並んだものは美しい」

ここで1つ疑問が出てくる。「食べやすくしたい」という理由だけなら、握り寿司のサイズを小さくすれば良かったのでは…?

日本には昔から、左右対称に2つ並んだものを美しいと考える気風がある。たとえば、神社の狛犬など分かりやすい例だろう。

握り寿司を2個ずつ出したのも、このような日本特有の気風を意識したものだという説がある。そういわれてみると、左右対称に並んだ握り寿司は芸術的かもしれない。

寿司1貫の正しい個数は?

ここまでは握り寿司をあえて1個、2個… と数えてきた。しかし、一般的には握り寿司を1貫、2貫… と数える機会が多い。では、寿司1貫とは何個のことなのだろうか?

これに関しては、「どちらでも良い」が正解となる。特に決まりがなく、人によって解釈が違うからだ。NHKの公式サイトにも「人によって解釈が異なります」という記載があった!

寿司の単位「貫」って?

寿司を数えるときの単位として「貫」が使われる。なぜ「貫」を使っているのかには多くの説があり、実は定かではないのだ。

  • 海苔巻きなどの巻物を「1巻、2巻…」と数えたことから転じた説。
  • 「貫」はもともと3.75kgを指す質量の単位。その重さの単位から派生した説。
  • 寿司をしっかりと握ることを「一貫の氷を重しにしたくらいの力で握る」といわれたという説。
  • 江戸時代の穴あき銭を紐でまとめた「一貫」が寿司の大きさと同じだということから転じた説。
  • 様々な説があるのだが、今でもどの説が正しいのかはわかっていないのだ。

“鮨”と”寿司”はどう違う?使い分けは?

「寿司」は当て字だった!「すし」を指す最も古い表記は「鮓」。

「すし」を指す最も古い表記は「鮓」。

古くから中国で使われていた漢字だ。塩や糟(ぬか)・発酵させた米などに魚を漬け込んだ保存食をあらわし、今でいう「なれずし」を指す言葉だ。

「鮓」のあとに生まれたのが「鮨」だ。もともと「鮨」は「魚の塩辛」を意味する言葉だったのだが、いつのまにか「鮓」と同義になり、「すし」をあらわす言葉として使われるようになった。

その後日本に「鮓」・「鮨」という言葉が伝わった時にはすでに同義語となっていた。日本では、「鮓」・「鮨」ともに718年の「養老令」のなかに出てきている。1000年以上も前から日本でも使われていた表記だったのだ。

「寿司」は江戸時代末期に作られた言葉

当時、すしは朝廷に献上する品のひとつだった。朝廷への献上品としてめでたさを強調するために当て字として「寿司」という表記が作られたのだ。

「寿」は「めでたいこと」、「司」は「支配する」…この2つの文字が並んだ「寿を司る」という意味の「寿司」はとても縁起がいい当て字だということがわかる。

「鮓」・「鮨」・「寿司」の呼び分け

今私たちが主に思い浮かべるであろう「すし」は握り寿司、すなわち江戸前寿司だ。江戸前寿司は江戸時代に入ってから生まれた比較的新しいすしだ。

それまではなれずしや押しずしが一般的だった。その後、ちらし・手巻き・いなりなど独自の進化を遂げたすし。

「鮓」・「鮨」はその由来から魚を使ったすし・発酵させたすしに使われることが多いが、「寿司」は種類を問わずオールマイティーに使われる。

現代はどの表記も使われているが、種類を問わずに使えて縁起担ぎも良い「寿司」が最も一般的な表記とされているようだ。

「かっぱ寿司」の名前の由来

「かっぱ寿司」の名前の由来は寿司桶がかっぱに見えたから!

かっぱ寿司の名前の由来は、1979年(昭和54年)に長野県で第1号店を開業した際の、とある特徴がキッカケ。

他の回転寿司店と同じように、コンベアに乗せて寿司を提供するのでは差別化が図れないと考えた創業者は、水流で動かして客に寿司を提供するという形をとっていたのだ。

その寿司が水に浮かんでいる様子が、かっぱの頭の皿のように見えたことから「かっぱ寿司」という名前になったという。ちなみに、普通の薄くて丸いお皿だと寿司が水上で安定しないため、寿司桶に入った状態で回っていたそうだ。

「スシロー」の名前はイチローにあやかった

さて、大手の回転寿司チェーン「スシロー」も、少し変わった名前の由来がある。

もともとは「すし太郎」という名前の回転寿司店であったが、CMなどで有名な永谷園のちらし寿司の素「すし太郎」と名前が被っており、訴訟を起こされそうになっていたそうだ。

そのため、少し短く「すし太」に変更しようとするものの、今度は「すし田(でん)」という名前の寿司店があったため、これも断念。結局、「すし郎」という名前に落ち着いたという。

その後、プロ野球でイチローが活躍して人気になると、それにあやかって2000年に社名を「あきんどスシロー」と改名。2009年には全店舗の屋号を「スシロー」に統一した。

ちなみに、スシローの本社は大阪にあり、当時イチローが所属していたオリックス・ブルーウェーブは神戸の球団。関西の球団で活躍するイチローにあやかるのも自然な流れだったのかもしれない。

高級寿司店のマナー&ルール

高級寿司店…と言っているが、どんな店が高級寿司店なのか。人それぞれ「高級」と感じるレベルは異なるので、どこからが高級か、と明確な線引きはできないだろう。

1皿100円~の回転寿司だって、人によっては「高級」と感じられるかもしれないし、回転寿司でも1皿500円くらいするお店もある。3億円以上でマグロをせり落とした「お寿司といえば…」のお店だって、私からしてみれば高級だ。

ここで解説する「高級寿司店」は、ネタやシャリにこだわっていることはもちろん、寿司職人がカウンター越しに直接お寿司を振舞ってくれる、店内に一度に数人しか入れないような店を指すと思っていただきたい。

たいていの場合、メニューはない

基本的には、板前さんに「おまかせ」。旬なネタやおすすめを握ってもらおう。熟練の職人がおすすめするネタなのだから、間違いはないだろう。

苦手なものがあるときは、「おすすめは何ですか?」と聞いてみて、食べられないものだったら断るのもOK!

板前さんの呼び方

カウンター越しにお寿司を握ってもらうので、板前さんを呼びたい場面も出てくるだろう。その場合は「大将」とか「親方」と呼ぶのがいいようだ。

香りに気を付ける

香水は紳士淑女のたしなみだが、強すぎる香りはダメ。せっかくの食事の香りが台無しになってしまうぞ。隣の席との間隔が狭いことも多いので、他のお客さんに迷惑が掛かってしまう。

箸でも素手でもOK

高級寿司店といえば手でお寿司を食べるようなイメージだが、箸を使ってももちろん大丈夫だ。手が汚れるのが嫌なら箸で!

箸を箸置きに

箸を箸置きに置くのは、高級寿司店だけでなく食事のときのマナー。皿の上に置くのは「渡し箸」といってマナー違反になるぞ。

箸置きがない場合は、醤油皿の上に箸の先だけ乗せて斜めに箸を置こう。箸袋を折って箸置きを作るのも良い。

醤油はつけなくていいこともある

醤油なしで食べるということではなく、板前さんが握ってくれた際にすでに醤油や塩をつけて出してくれるというスタイルの店もある。ただし、巻物には自分で醤油をつける。

醤油をつけるときに「ネタだけ」はNG

巻物だけでなくすべての寿司に自分で醤油をつけるスタイルの店もあるだろう。その場合、ネタだけをはがして醤油につけ、またシャリの上に戻して食べるのはマナー違反。

シャリに醤油がつくと浸透しすぎてしょっぱくなってしまうので、お寿司を横に倒してからつければ、ネタだけに醤油がつけられる。

わさびを溶かさない

醤油皿にわさびを溶かすのはマナー違反。わさびの辛味や香りが飛んでしまう。

一口でいただく

出されたお寿司を箸で切ったり、噛み切ったりするのはマナー違反だ。一口で食べて味を堪能しよう。

ゲタは動かさない

板前さんが握ってくれたお寿司は、客の目の前にセッティングされたゲタに置かれる。ゲタというのは、寿司台とも呼ばれる履物の下駄に似た形をした木製の台。

これは客がお寿司をとりやすいような位置にセットされているため、動かさずに載せられたお寿司だけをとって食べよう。

ネタだけ食べるのはダメ

出されたお寿司のネタだけを取って食べ、シャリを残すというのは、業界用語で「追い剥ぎ」と言われ、マナー違反となる。もし糖質オフとかを考える場合は、注文のときに「シャリ少なめで」と言えばOKだ。

腕時計やブレスレットは外す

高級寿司店のカウンターは、使われている木材も高級。傷が付いてしまうのを嫌う板前さんもいるようだ。

腕時計はカウンターの上に置いておくのもいいが、せっかくの楽しい食事のとき。時計はしまっておいて時間を気にせずに過ごすのもオツではないだろうか。

写真は確認をとってから

「高級寿司店なんてめったに行かないから記念に写真を残しておきたい」「SNSに載せて自慢したい」など、いろんな理由があると思うが、写真を撮るのは板前さんに許可をとってから。これは高級寿司店だけに限らないマナーだ。

ツウな食べ方

ここでは知っていると、ひと目置かれるような知識をご紹介する。

さっぱりしたものから食べる

トロやアナゴなど、味の濃いものから先に食べてしまうとその後に食べるものの味がわかりにくくなってしまう。

食べるときは鯛などの白身から食べ始め、赤身・光物・玉子・貝・アナゴなど・巻物の順に食べるのがツウらしい食べ方のようだ。

しかし、これはマナーではない。好きなものから食べても何ら問題はないぞ!

ガリを合間に挟む

味の濃いものを食べた後にさっぱりしたものを食べたい場合、次のお寿司を食べる前にガリを食べるといい。

辛味と甘酸っぱさで食べたものの味がリセットされ、次に食べるものの味をしっかり楽しむことができる。

左から食べる

「おまかせ」などで数種類のお寿司が並んで出てきたら、左から食べるのがツウ。左から右に向かって、順に味の濃いものになるように置かれているのだ。

2列になっている場合は、手前側の列の左に置かれているお寿司が一番さっぱりしているものだそう。

わさび抜きもOK

わさび抜きは恥ずかしくない。かっこつけて無理して食べて味がわからないのではもったいないので、注文時に板前さんに伝えよう。

時価は聞いても良い

値段を気にせず食べたいものを食べたいだけ食べられるのが理想だが、やはりそうはいかない場合もある。高級寿司店ではメニューがない場合や、金額が記載されていない場合も多い。

お会計の際に料金を聞いて腰を抜かさないように、注文のときに時価を聞いても大丈夫だ!

椀物は後半に頼むのがツウ

汁物は、食事終了の合図としても使われる。一番初めに味噌汁などを注文してもマナー違反ではないが、「寿司屋に慣れた感じ」を出したいなら後半に頼むのがおすすめだ。

業界用語使いすぎに注意

ツウな感じを出そうと「あがり」「おあいそ」「むらさき」などの言葉を連呼するのは、逆にかっこ悪い。板前さんたちが板場の中で使う言葉なので、お客の立場でそれらの用語を使うのは間違いなのだ。

寿司屋の符牒(ふちょう)

符牒とは、板前さんどうしが使う合言葉のこと。上記でも述べた業界用語もそのうちの一つだ。

特に会計のときに使われる数字に関する符牒が独特で、知っていれば高級寿司店に慣れている感を演出できるぞ!

1…ピン 2…リャン 3…ゲタ 4…ダリ 5…メノジ 6…ロンジ

7…セイナン 8…バンド 9…キワ 10…ピンマル 11…ピンピン(ナラビ) 12…チョンブリ

13…ソクキリ 14…ソクダリ 15…ソクメ(アノ) 16…ソクロン 17…ソクセイ 18…ソクバン

19…ソクキワ 20…リャン 22…ノナラビ 35…ゲタメ 45…ダリガレン 55…メナラ

カウンターの中にいる板前さんは、客とのお金のやり取りを直接行わない。符牒を使ってレジ係に知らせるのだ。

たとえば、1,000円は「ピン」。まあ、高級寿司店でお会計が1,000円ということはないと思うが…。「ダリガレン」は4,500円のときも45,000円のときも使われる。レジ係がどちらかわからない場合、「大きくですか? 小さくですか?」と聞くそうだ。

レジ係に直接「〇〇円!」と板前さんが伝えないのは、高級店ならではの粋な計らい。そして、もし板前さんとレジ係のやり取りが聞こえてしまったら、他のお客さんがいくら分飲食をしたのかわかってしまう…が、自分の心の中にとどめておこう。

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