孫の手

背中などの自分の手が届かない部位を掻く際に使う長い棒状の器具。

孫の手は通常長い棒状であるが、その使用時、すなわち背中と並行の位置にした場合、先端が背中の皮膚に概ね直角に接するように曲げられており、多くはその部分に切れ目が入っているため、指先を曲げた手のように見える(全体を見れば腕のようにも見える)。英語ではバックスクラッチャー(backscratcher)といい、自分の背中に手が届かないことは人類共通の悩みであったことなどもあって、世界各国で同様なものが用いられている(手の形を模しているのも概ね世界共通である)。近年はそうした海外のものが輸入販売されることも多くなってきている。

歴史

身近な日用品だけに、孫の手がいつから使われているのか、あるいは誰が発明したのかなどはわかっていない(有史以前から木の枝などを用いてヒトは背中を掻いていたと想像することに特段の無理はない)。

前述のように日本のものは木や竹製がほとんどだが、とくに17〜18世紀ヨーロッパの上流階級においては、象牙などによって作られたものや、銀などの貴金属による装飾がほどこされたものが使われたこともある。これは当時の貴婦人たちが用いるものであり、外出のときなどにもアクセサリー代わりにドレスの腰からぶら下げるなどして持ち歩くことがあった。

この理由は、当時の貴婦人たちの着衣にある。日本のように入浴を好む習慣もなく、さらには当時の下着類はそれぞれの人のサイズに合わせて作られたぴったりしたオーダーメイドであったこともあり、必ずしも毎日脱ぎ着することもなかった。それらにより、シラミなどがいて痒みを感じることが頻繁にあったからといわれる。

このように携帯する孫の手の中には、普段はただの直棒状であり、使用時に「手」部分を装着して用いるものがあった。また、その「手」は、鳥の足などを模したものが使われることがあった。

仏具の1種である「如意」は孫の手のような形状をしており、実際に痒いところを掻くためにも使われた。

語源

「孫の手」は、棒の先に手のような形をしたものが付いていること、またその名前から、年寄りが自分のかわいい孫に背中を掻いてもらっている姿から呼ばれるようになったと思いがちですが、実は「孫」は全く関係ないんです。

実はこの道具、もともとは「麻姑(まこ)の手」と呼ばれていました。

「麻姑」とは、中国の西晋時代の書『神仙伝』出てくる仙女の名前です。

漢の桓帝(かんてい)の時代、王遠(おうえん)という仙人がいました。その仙人がかつて修行の要領を授けた蔡経(さいけい)の家に下っていたのですが、しばらくして妹も呼んできました。その妹が麻姑(まこ)でした。

麻姑(まこ)はたいそうな美人であったそうですが、手の爪が鳥のように長く、蔡経は「この爪で背中を掻いてもらえたらどんな気持ちいいだろう」と思っていたそうです。ところが王遠(おうえん)はそんな蔡経(さいけい)の邪念を見抜いており「麻姑は仙人であるのにお前は何を考えているのだ」と叱ったそうです。

このような中国の故事から、届かないところを掻く道具のことを「麻姑の手」と呼ぶようになったようで、実際かつては引っ掻く爪の部分も今より大きくて長かったそうです。

ところが、それが日本に伝わると形が小さくなり、「孫の手」といわれるようになったのだとか。ちなみに、かゆいところが掻ける、すなわち物事がうまくいくことを「麻姑掻痒(まこそうよう)」といいます。

近年、孫の手は、木材の産地などで、おみやげとして売られることも多いようですが、一方でバラエティショップ等で、肩叩きや靴べらと兼用になっているものなどもあるようです。

耳かき(耳掻き)

東アジア人種に多い乾いた耳垢の除去に適しており、白人・黒人に多い粘性の耳垢の除去には向いておらず、したがって欧米ではあまり販売されていない。

さじの反対側(後端)には、梵天(凡天、ぼんてん)と呼ばれる鳥の羽毛がつけられている。

料理などの際に調味料を合わせるとき、「耳掻き一杯程度」などとして分量の目安として使われることもある。これは「ほんの少し」の比喩的表現である。

耳掃除を好んで行う人は、迷走神経が集中する外耳道に耳かきで触れることで快感を得られるとされる。一方で、2割ほどの人は同様の行為で咳が出る。

歴史

記録に残っている日本における最初の耳掻きは、簪(かんざし)に由来するものであるという。これの端をへら状にしたものが出始めたのが耳掻きの始まりで、江戸時代、高橋図南(たかはしとなん)という人物により享保(きょうほう、きょうほ)年間に発明された。奈良時代前期の遺跡である、平城京の長屋王邸跡(ながやおうていたくあと)より木の耳掻きが出土しているが、これは耳掻きではなく留め釘である可能性も指摘されている。

世界的にみても公開されている記録は少なく、とくにヨーロッパにおいては、ローマ時代の遺跡から耳掻きが出土しているが、研究がほとんどないために更に遡ることは困難である。また中国においては、3000年以上前の「「商の遺跡、河南省安陽の殷墟「「婦好墓(ふこうぼ)から、精巧な玉(一般に翡翠のこと)の耳かきが2本出土している。

中国では紀元前13世紀商代の婦好墓から玉を削って作った耳かきとみられるものが出土している。

なお、18世紀程度のヨーロッパにて作製された銀製の耳掻きなどが、骨董品として市場に出ることがある。

江戸時代には、耳掻きを専門に行うという職業「耳垢取」があった(山東京伝の『骨董集』に記述が見られるほか、落語にも登場する)。

健康上の見地

耳掻きを過剰に行った結果、外耳道が炎症を起こすこともあるので注意が必要である。特に幼児に対しては耳掻きを使ってはならず、耳掃除をしてあげるのであれば綿棒を用いるべきとされる。医学的にみれば、正常な耳垢には雑菌の繁殖を抑え、皮膚を保護する効能があり、一般的には耳垢取りはひと月に一度、2-3分行えば十分とされる。通常は耳垢取りをしなくても耳垢は自然に排出されるが、排出されず外耳道を塞ぐほど耳垢が詰まることもあり、これを耳垢塞栓という[5]。ただし、耳垢塞栓は耳かきで耳垢を取るつもりで意図せず少しずつ奥に押し込んでしまうことでも発生する。耳垢が鼓膜に付着した場合に難聴の原因になったり、耳に水が入った際に耳垢と反応して外耳炎になることもあり、耳垢や耳垢塞栓は耳鼻咽喉科の医療機関で除去処置を行うことできる。

耳掻きをしている最中にペットや子供が飛びかかってきて鼓膜に穴を開けてしまう事故も多い。

イヤーキャンドル

紙状の薄い蝋などを円錐形に丸め、その先端を耳に入れたまま火をつけて耳垢をとろうとする方法がある。火が燃える際に耳内の空気を吸い込むため、それとともに耳垢も吸い出されるとされる。

しかし、いくつもの研究で、イヤーキャンドルの蝋燭の残渣物と、単に蝋燭を燃やした時の残渣物が同じ(蝋と煤)であったことから、耳垢除去効果は科学的には否定されている。

現在では耳垢除去の効果を否定し、アロマセラピーとの趣旨で販売されている。なお、こういったイヤーキャンドルと呼ばれている製品を用いた際、外耳道に溶けた蝋が滴り落ちて火傷を負うなどの事故が報告されている。

耳かき専門店

2005年(平成17年)7月26日に、厚生労働省医政局長が各都道府県知事に対して、「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知で、「耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)」が医行為(医療行為)ではないと考えられることを通知した[1] 。それ以前から理容店での追加サービスとして耳かきが行われてはいたが、通達以降、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌など日本の大都市を中心に「耳かき専門」などをうたう店舗が増えてきている。一口に「耳かき」といっても、その業態は多様であるが、顧客は、施術の結果としての健康増進や耳回りの審美性向上よりも、施術中の気持ちの良さを求める点が各業態で共通してみられる。理容店では男性の理容師が耳かきを行うことも普通であるが、専門店で耳かきを行う施術者(店員)は女性が多く、後述の「ひざまくら型」ではほぼ例外はない。

「耳かき」を掲げている店舗は、いずれも医療機関や施術所・治療院の類いではないため、健康保険はまったく利用できない。また、耳垢が硬化していると、医療機関の耳鼻科に通院しないと除去できない場合もある。

医療行為ではないとされるものの、道具を不衛生なまま使いまわすと感染性の外耳炎・中耳炎・皮膚炎等の炎症や血液感染する感染症を媒介する危険があるため、客ごとに道具の消毒または取り替えを行うことや、耳内に炎症のある客に無理をして施術しないことが必須である。

耳を掻き過ぎると“かゆみ物質”が分泌される

「耳かきが癖になっている、あるいは我慢できないという人は確かにいます。それ自体は病気ではないけれど、決して好ましいことでもありません」

こう語るのは、東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香医師。

「耳かきが癖になっているのは、耳が痒いから。なぜ耳が痒くなるのかといえば、耳を掻き過ぎて“かゆみ物質”が分泌されているから。外耳道に湿疹ができているのです」

 外耳道とは、耳の入口から鼓膜までを指す。耳垢が溜まるのは、このうち外側の半分あたりまで。ここを耳かきで引っ掻き回すと、皮膚が薄くなって炎症が起きて痒くなる。痒い所を掻けば、当然気持ちいい。だから耳かき行為はやめられない。でも、どこかで悪循環を断ち切らなければいけません。

「耳の中には本来細い産毛が生えていますが、耳をかき過ぎている人の耳の中を顕微鏡で見ると、その毛さえ抜け落ちている。医療的な処置としては、かゆみ止めや抗菌薬を塗ったり飲んだりといったところですが、薬を使ったところで耳かきをやめなければ改善は見込めません」(木村医師)

 木村医師によると、耳垢にも役目があるという。それは耳の中に侵入してきたちりやごみの吸着と保湿だ。

「つまり、耳垢は耳に入ってきたちりやごみから外耳道や鼓膜を守っているのです。耳には自浄作用があって、耳掃除をしなくても耳垢は奥から外へと自然に移動し、最後は剥がれ落ちる仕組みになっています。アメリカの耳鼻咽喉科学会では『耳掃除はするべきではない』というガイドラインまで作成している。耳そうじをすることで得られるメリットより、リスクのほうが大きい――と判断しているのです」

では、耳垢は放置すべきなのか
 耳かきのし過ぎによるリスクは、先に触れた外耳道湿疹ばかりではない。時には「がん」を引き起こす危険性もあるという。

「外耳道がんという病気があります。非常に珍しい希少がんの一つで、耳の掻き過ぎが原因というわけではないものの、このがんの患者には耳かきが癖になっている人が多いという報告がある。何らかの因果関係があっても不思議ではない」

 では、耳垢は放置すべきなのか。

「耳垢が過剰に溜まり過ぎると、耳垢栓塞(じこうせんそく)といって聞こえが悪くなることがある。また補聴器を使っている人は、耳垢が補聴器の機能を下げることもある。そんな時には耳鼻咽喉科で掃除することもあります。その方法は、鉗子でつまみ出す、機械で吸引する、あるいは生理用食塩水で洗い流す、など。自分で掃除をしたいなら、1~2週間に1度程度、強い刺激を与えないレベルで掃除するならいいでしょう」

 木村医師によると、竹の棒ではなく綿棒を使い、風呂上りなど耳に適度な湿潤があるときにやさしくふき取る程度で十分とのこと。耳の中が乾いた状態の時は、そのまま綿棒を使うと刺激になるので、少量の水やオリーブオイルなどで綿棒の先を湿らせてから使うといい。間違っても釘のアタマなどで擦ってはいけない。

耳が聞こえるのに耳の穴が痛むときは、かなりの確率で急性外耳道炎が起きていて、急性外耳道炎の原因のほとんどが耳かきのし過ぎだという。

 この記事を読んでいただいたのも何かの縁です。とりあえず2週間、耳そうじを我慢してみませんか?

画像

  • イヤーキャンドル
  • 東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香医師

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